サ イト更新情報
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11.6.2025
少し間が空いた。アップデートをいくつか。
まず個人的なことから。この夏にイングランド最北の都市、ニューカッスル・アポン・タインへ移住することになった。自分には学生時代から北国への強い憧れが
あって、ロンドンやホーシャムに住んでいた頃から、いずれは北へ移ろうと思って移住先を探していた。当初はグラスゴー、エディンバラ、その周辺を考慮。
特にグラスゴーに興味があったのだが、男性の平均余命が非常に短くなる、いわゆる「グラスゴー効果」を知って候補から外した。「グラスゴー効果」の要因として、貧
困、アルコールの過剰摂取、日照不足、土壌のコンタミなど、いろいろな理由が挙げられているのだが、なぜ短くなるのかがよくわかっていない。この「グラス
ゴー効果」を調べている際に、医療体制が充実している街として浮上してきたのがニューカッスルだった。調べてみると、ニューカッスルは国際空港や大自然へのアク
セスが良く、物価が安く、治安も悪くなく、優秀な大学と水辺があり、私が住んでいた頃のシアトルに雰囲気がよく似ていて理想的に思えた。評判では、人々も異常にフ
レンドリーだという(ただし、ジョーディという強いアクセントのため、人はいいけど何を言っているかわからないらしい)。

5月に実際にニューカッスルに下見に行ってみて、街のヨーロピアンな佇まいがいたく気にいった
ので、ウーズバーン地区のタイン河を望む丘の上にフラットを購入した。ウーズバーンはアーティスト達が集まるエリアで、ニューカッスルのアート、サブカル文化の中心地でも
ある。「英国で最もクールなエリア」と各メディアに喧伝されたりしているが、正直、まだそこまではいっていないと思う。ただ今後、ロンドンのショーディッ
チ地区のように発展する可能性はある。
ニューカッスルにはロイヤル・ノーザン・シンフォニアという立派なオケがあって、過去、イヴァン・フィッシャーがここのシェフを務めた。今のシェフはディ
ニス・ソウザという人で、少し前にジョン・エリオット・ガーディナーが暴力事件を起こした際に、代役でモンテヴェルディ合唱団・管弦楽団を指揮した。
さらにニューカッスルにはシアター・ロイヤルという立派なオペラ・ハウスがあって、オペラ・ノースが拠点の一つとしている。こことは別にタイン・シア
ター・オペラ・ハウスという劇場もあるのだが、こちらは今はオペラ公演には使われていない。過去はドミンゴやサザーランドが歌ったことがある劇場のようだ
が、今は専らコメディや演劇に使われている。
こういう事情なので、Nyiregyhazi Live Vol.
4のリリースはニューカッスル移住後の予定。移住前にリリースすると荷物が増えて引っ越しが大変になるので。一方でリリースの準備は着々と進めていて、今
月中にはCDのプリントができる段階まで終えられるだろう。リリースのタイミングはフラット購入の手続き次第だが、おそらく9月になると思う。
プログラムは以下。
Disc 1
(Novato, California, 1973)
Franz Liszt
Années de pèlerinage, deuxième année: Italie:
1. No. 7, “Après une lecture du Dante: Fantasia quasi sonata” (Dante Sonata)
2. No. 6, “Sonetto 123 del Petrarca”
3. No. 2, “Il penseroso”
Années de pèlerinage, troisième année:
4. No. 4, “Les jeux d’eaux à la Villa d’Este”
Pyotr Il’yich Tchaikovsky
5. Douze morceaux (difficulté moyenne), Op. 40: No. 8, Valse in A-flat Major
Johannes Brahms
6. Clavierstücke, Op. 118: No. 3, Ballade in G Minor
Theodor Leschetizky
7. Trois morceaux, Op. 48: No. 3, “Étude héroïque”
Disc 2
(Novato, California, 1973)
Franz Schubert
“Wanderer” Fantasy in C Major, Op. 15, D. 760
1. I, Allegro con fuoco ma non troppo
2. II, Adagio
3. III, Presto (Note: The reprise of the opening section—mm. 513-97—is missing in the original tape.)
4. IV, Allegro
(Encore)
Pyotr Il’yich Tchaikovsky
5. Romance in F Minor, Op. 5
(Bonus tracks: Ampico piano rolls, 1921-24)
Christian Sinding
6. Charakterstücke, Op. 34: No. 1, “Prélude”
Percy Grainger
7. Paraphrase on Tchaikovsky’s “Flower Waltz” (Nutcracker Suite, Part 3)
Theodor Leschetizky
8. Trois morceaux, Op. 48: No. 3, “Étude héroïque”
Henri Kowalski
9. Salut à Pesth (Marche hongroise), Op. 13
Johannes Brahms
10. Rhapsody in B Minor, Op. 79/No. 1
Franz Liszt
11. Ballade No. 1 in D-flat Major, Le chant du crosé
12. Études d’exécution transcendante: No. 4, “Mazeppa”
ノーマ・フィッシャーのBBC Vol. 4は素材を集めているところで、先日、アビーロードスタジオでノーマ私蔵のテープを10本ほどチェックした。発見もあり、2作品は次のアルバムに使えると思う。
最後に、来年の12月頃、ノーマのマスタークラスを東京と京都で行う計画を進めている。受け入れ先の大学が決まった段階で、これから資金調達をしていく。詳しいことは進展があった際に後ほど。
2.16.2025
以前も書いたことだが、ウィキペディアに本サイトが引用されており、注釈が付けられているのだが、誤読と誤情報に基づいた問題のある注釈なので再度指摘しておきたい。以下の文章を引用されたページに加えた。

(注)2025.2.13追記: ウィキペディア日本語版で本ページが引用され、「ただし、オグドンのLPの発売は1969年、スミスのLPの発売は1970年、ルエンサールのLPの発売は1971年であり、ニレジハジが火付け役という根拠は弱い。ニレジハジが1972年以後のテレビ出演で披露した作品はアルカンではなく、ブランシェの作品である」との注釈がつけられている。
このウィキペディア注釈には二つの点で問題がある。
1)
まず、論点の根本となるディスコグラフィ情報が間違っており、この点のみでもこの注釈には価値がない。ルーウェンサールのアルカン曲集のLPは1971年
発売ではなく、1965年の発売で、アルカン曲集のレコードとしては最初のもの。英グラモフォン誌1966年4月号498ページにルーウェンサールの
RCA盤(SB6660,
RB6660)の評が掲載されているが、これ以前のグラモフォン誌にはアルカンの話題はほとんど登場しない。「アルカン」の文字が初めて英グラモフォン誌
に
登場するのは創刊から30年が経った1953年2月号で、「髪の毛が逆立つような」アルカンの音楽が熱心なアメリカ人達によって録音されることを期待す
る、とある。ルーウェンサールのアルカン・アルバムの影響は大きく、マルカンドレ・アムランも子供の頃にこのアルバムを聴いた。
2)
次に誤読。私は、ルーウェンサールがアルカンの紹介者となった原因をニレジハージが作った、と上に書いたのであって、ニレジハージがアルカン・ブームの火
付け役 である、とは書いて
いない。若き日のルーウェンサールがニレジハージのピアノによってアルカンの作品を最初に耳にしたことは、彼自身が未発表の手記に記している。したがっ
て、ニレジ
ハージが「1972年以降のテレビ出演に披露した作品はアルカンではなく、ブランシェの作品である」という最後の文章は、単に起きた事実を書いているだけ
で何の議論もサポートしていない。
2.15.2025
2007年にM&Aより発売されたニレジハージの2枚組の情報にエラーがあることがわかった。私はこのCDのリリースにはほとんど関係していない
が(Pのバザーナに選曲を相談された程度)、今後のプロジェクトにも関わるのでここで情報を修正しておきたい。修正すべき点は下のトラックの青字で、正しくは
Century Club of California, San Francisco, 17 December 1972である。
ミスが起こった理由もわかっている。高崎にあったアーカイブ(現Sonetto保有)に1973.7.29の日付の入ったリールがあり、そこに
1972.12.17のCentury
Clubでの演奏会の後半部の数曲が1973.7.29のものとして「混入」していた。それが情報とともにCD-Rとしてニレジハージ・ファンの間に出回り、バザーナが
そのCD-Rに記載された情報基づいてM&Aのトラックリストを作成してしまった、という経緯である。
今回、リカルド・エルナンデスから貰った1973.7.29のリールをトランスファーするにあたり、下記の楽曲が含まれていないこと、プログラムにも記載
がないこと、そしてCD-RとM&Aの録音を確認したところCentury
Clubの録音と同一であったことから、エラーが発覚した。バザーナにも既に報告し、彼の確認を得ている。
ところでエルナンデスから貰った1973.7.29のテープだが、トランスファーを行ったところ、一部に深刻な劣化があることがわかった。上記のアーカイブのテープを今週トランスファーし、それと組み合わせて使うこととなると思う。
CD: Ervin
Nyiregyházi in Performance (Music and Arts, CD1202)
(Disc 1)
1. Liszt: Legendes:
No. 1, "St. Francois d'Assise: la predication aux oiseaux"
Old
First Church, San Francisco, 6 May 1973
2. Liszt: Legendes:
No. 2, "St. Francois de Paule marchant sur les flots"
Old First Church, San Francisco, 6 May 1973
3. Liszt: Excerpts from No. 5 ("Elizabeth") of the oratorio Die Legende
von der heiligen Elisabeth (arr. Nyiregyhazi)
4. Zwei KonzertetudenL No. 1, "Waldesrauschen"
Home of Ronald Antonioli, Novato, California, 29 July 1973
5. Liszt: Annees de pelerinage, deuxieme annee, Italie: No. 6, "Sonetto
123 Petrarca"
Home of Ronald Antonioli, Novato, California, 29 July 1973
6. Liszt: Annees de pelerinage, troisieme annee: No. 2, "Aux cypres de
la Villa d'Este" (No. 1, 3/4)
Century Club of California, San Francisco, 17 December 1972
7. Liszt: Annees de pelerinage, premiere annee, Suisse: No. 2, "Au lac
de Wallenstadt"
Dai-ichi Seimei Hall, Tokyo, 21 January 1982
8: Brahms: Intermezzo in E-flat Minor, Op. 118/No. 6 [6:23]
Home of Ronald Antonioli, Novato, California, 29 July 1973
9: Scriabin: Sonata No. 4 in F-sharp Major, Op. 30 (two linked movements
Forest Hill neighborhood association clubhouse, San Francisco, 24 May
1973
10: GRIEG: Lyric Pieces, Op. 54: No. 4, "Notturno" [5:42]
Forest Hill neighborhood association clubhouse, San Francisco, 24 May
1973
CD 2 ]
1. TCHAIKOVSKY: Douze morceaux, Op. 40: No. 8, "Valse" in A-flat Major
Forest Hill neighborhood association clubhouse, San Francisco, 24 May
1973
2. TCHAIKOVSKY:
Romance
in
F Minor, Op. 5
Takasaki College of Music, Takasaki, Japan, 1 June 1980
3. DEBUSSY: Estampes: No. 1, "Pagodes"
Forest Hill neighborhood association clubhouse, San Francisco, 24 May
1973
4. DEBUSSY: La plus que lente
Forest Hill neighborhood association clubhouse, San Francisco, 24 May
1973
5: CHOPIN: Mazurka in C-sharp Minor, Op. 6/No. 2
Century Club of California, San Francisco, 17 December 1972
6: CHOPIN: Prelude in C-sharp Minor, Op. 28/No. 10
Century Club of California, San Francisco, 17 December 1972
7: CHOPIN: Mazurka in F Minor, Op. 63/No. 2
Century Club of California, San Francisco, 17 December 1972
8: CHOPIN: Mazurka in B Minor, Op. 33/No. 4 [6:09]
Century Club of California, San Francisco, 17 December 1972
9: CHOPIN: Nocturne in F Minor, Op. 55/No. 1
Old First Church, San Francisco, 6 May 1973
10: RACHMANINOFF: Piano Concerto No. 2 in C Minor, Op. 18, II: Adagio
sostenuto (arr. Nyiregyhazi)
Dai-ichi Seimei Hall, Tokyo, 21 January 1982
11: SCHUBERT: "Der Wanderer" (arr. Nyiregyhazi)
Takasaki College of Music, Takasaki, Japan, 31 May 1980
12: SCHUBERT: "Heidenroslein"(arr. Nyiregyhazi)
Takasaki College of Music, Takasaki, Japan, 1 June 1980
13: MACPHERSON: "Before the Dawn" from Deserted Garden
Los Angeles Federal Symphony Orchestra/Modest Altschuler
Federal Music Project, Program No. 76, 1936
2.9.2025
2025年に入った。ニレジハージの4枚目の制作を始めたところで、すでにテープをアビーロード・スタジオに渡したところ。来週にはトランスファーが終わる。
フォルテピアノの川口成彦さんがフィンチコックスでの録音のためロンドンに滞在中。昨日は、彼に付き添いで来た東京エムプラスの鈴木社長、川口さんの友人
のヴァイオリニストの草川研二さんと会食した。川口さんとは昨年以来、ロンドン、マドリッド、東京、と世界のいろいろな街で会っては一緒に飲む仲になっ
た。今後もお互いのネットワークを使って世界を広げられれば、と思っているし、実際に広がってきている。